楽しいジャズピアノの練習方法を追求するブログ

アッパーストラクチャー

『ザ・ジャズ・ピアノ・ブック』はピアノのヴォイシングを学ぶのにいい本だと思います。ヴォイシングに限定すると

Chapter 3 3ノート・ヴォイシング
Chapter 5 3ノート・ヴォイシングへの音の追加
Chapter 7 レフトハンド・ヴォイシング
Chapter 8 レフトハンド・ヴォイシングの変化する音
Chapter12 So Whatコード
Chapter13 4thコード

という流れで練習することになります。Chapter 8までが基本中の基本で、それ以降は60年代以降のモダンな(半世紀以上前ですが)ハーモニーになります。ヴォイシングに関してはわかりやすく書かれています。

しかし次の

Chapter14 アッパーストラクチャー

はちょっと問題があると思います。なぜかドミナントに関する説明ばかりで他のコードクオリティについては、何も書かれていません。例えば II-7 ではどうするのか? という事について説明はありません。しかし譜例を見るとあるのです。117ページのFig.14-1は、Stella By Starlight の最初の4小節ですが、EφではDメジャートライアド、C-7ではBbメジャートライアドがあります。p121の Fig.14-8 とその下に続く説明に多少説明がありますが、それでもメジャースケールに基づくコードはどうするのか?という疑問は残ります。何よりまとめられていません。そういう訳でまとめてみる事にしました。

アッパーストラクチャーの表記は「US」と大文字で書いて、次にルートからの度数をギリシャ文字で書きます。全音下の場合は、短7度なので度数はbVIIですから「USbVII」となります。これは『ザ・ジャズ・ピアノ・ブック』内での表記であり一般的なものではありませんが、わかりやすいのでそれに倣うこととします。

『ザ・ジャズ・ピアノ・ブック』の全体構成、そして『ザ・ジャズ・セオリー』も持っている場合の読み方については、 『ザ・ジャズ・ピアノ・ブック』と『ザ・ジャズ・セオリー』の読み方 を参照してください。

スケールについては、【スケールの使い方】の表を参照してください。

II-7の場合

US VIIb を使う

マイナーセブンスコードでは全音下のメジャートライアドを弾きます。

D-7のアッパー・ストラクチャー・トライアド

スケール:ドリアン

左手はマイナートライアドを弾き、右手は全音下のメジャートライアドを弾きます。左手は 3-7 や 1-3 でもかまいません。 音域的に低くなるコードでは左手を転回した方がいいでしょう。これは他のアッパーストラクチャーにも言える事ですがトライアドコードは右手も左手も転回してもかまいません。

アッパー・ストラクチャー・トライアド転回例

特に右手については転回した方が良いサウンドになることが多いです。しかし以降の譜例では説明のため転回形を使わない事にします。

IIφの場合

US VIIb を使う

ハーフディミニッシュコードでも全音下のメジャートライアドを弾きます。左手はルートと b5 を押さえます。アッパーストラクチャーを弾く時は、とりあえず左手は 3-7 でいいと思うのですが、ハーフディミニッシュの場合だけ、左手をルートと減5度とするのがいいサウンドだと思います。

ハーフ・ディミニッシュのアッパー・ストラクチャー・トライアド

スケール: ロクリアン♯2

V7の場合

ドミナントコードは幾つかの選択肢があります。ドミナントコードはトーナリティ(調性)がメジャー(長調)/マイナー(短調)のどちらでもV7です。しかしテンションやスケールの使い方でどちらの色も出るのです。明るく元気なメジャーな雰囲気にも、暗く悲しいマイナーな雰囲気にもすることができます。選択肢が多く自由度が高いので使い方によって様々な表情になる訳なんですが、アッパーストラクチャーの場合も同じです。そういう訳で、トーナリティがメジャーとマイナーの場合に分けて考えます。

【トーナリティがメジャーの場合】

US VI を使う

長6度上のメジャートライアドが良い響きで使いやすいです。?13 がメジャーの響きですが b9 があるのでマイルドになります。

コンディミのアッパー・ストラクチャー・トライアド

スケール: コンビネーション・オブ・ディミニッシュ

上の譜例では、左手を3-7で書いてますが、3rdの音が右手に含まれますので、1-7 の方がいいサウンドになります。

US II を使う

ちょっと前衛的になりますが全音上のメジャートライアドも使えます。

リディアン7thのアッパー・ストラクチャー・トライアド

スケール: リディアン7th

【トーナリティがマイナーの場合】

US VIb を使う

短6度上のメジャートライアドを使います。

オルタードのアッパー・ストラクチャー・トライアド

スケール: オルタード

US Vb を使う

減5度上のメジャートライアドもいい響きになります。

オルタードのアッパー・ストラクチャー・トライアド

スケール: オルタード

US IIb minor を使う

半音上のマイナートライアドもあります。

マイナーのアッパー・ストラクチャー・トライアド

スケール: オルタードハーモニックマイナーパーフェクト5thビロウ

ドミナントコードについては『ザ・ジャズ・ピアノ・ブック』の説明が詳しくわかりやすく書かれていますので、詳しく知りたい方は、そちらを読まれることをお薦めします。

その他のセブンスコード

US II を使う

II7やVIIb7、VIb7といったリディアン7thスケールを使う場合は全音上のメジャートライアドを弾きます。

II7のアッパー・ストラクチャー・トライアド

スケール: リディアン7th

I や IV の場合

US V を使う

メジャーコードでは、完全5度上のメジャートライアドを弾けばいいでしょう。右手に5thの音が含まれるので左手は 1-3 や 3-6 と相性がいいです。

トニックのアッパー・ストラクチャー・トライアド

スケール: メジャースケールリディアン

US II を使う

IVやIをリディアンにした場合には、全音上のメジャートライアドというのもアリです。

リディアンのアッパー・ストラクチャー・トライアド

ちょっと前衛的になります。そしてエンディングでも使えます。

スケール: リディアン

I- の場合

US V を使う

マイナーキーのトニックコードの場合です。これも完全5度上のメジャートライアド使えます。エレガントな響きになります。右手に5thの音が含まれるので 1-3 や 3-6 と相性がいいです。

メロディック・マイナーのアッパー・ストラクチャー・トライアド

スケール: メロディックマイナー

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