楽しいジャズピアノの練習方法を追求するブログ

アドリブはリックの組み合わせか?

リック(lick)とは、よく使う短いフレーズの事です。 wikipediaの「即興演奏」の「コードに基づいたジャズのアドリブの方法」にはこう書いてあります。

--引用開始--

オーソドックスなスタイルのジャズで即興演奏をする奏者は、一般的にリック(よく使われる短いフレーズ)をいくつも覚えていて、曲想やひらめきなどに応じて、知っているリックを自在に組み合わせて演奏する。

--引用終了--

また本によっては同様の解釈のものがあります。稲盛康利さんの本でも、少しづつフレーズを覚えアドリブを書き、簡単な曲からアドリブに挑戦する、という事が書いてあります。大抵の本では、そのような事を書いています。そう明確に書いていなくても、お手本的なフレーズが書いてあって、それがアドリブ例で使われていたら、「ははぁ、そういうものなのか。」となるわけです。
そんな本が多いので、僕も最初は「アドリブはリックの組み合わせ」だと思いました。しかし、そうだとすると膨大なリックを覚えないといけない事になります。レコードを聴けば何コーラスもアドリブしてますが、それだけリックを覚えているのでしょうか?これはおそらく誰でも疑問に感じる事でしょう。

覚えても出てこないリック

そんな訳で、リックをつなげてアドリブをしてたら膨大なリックを覚えていとダメなのでは?アドリブ無理かも…と思い始めました。しかしそれでも、そういうものかと諦めコツコツ練習を始めましたが、いくつかリックを覚えてから実際アドリブしてもリックが出てこないのです。

アウトプットが必要

この原因は、インプットの練習しかしていないので記憶されたフレーズを引っ張り出す為のアウトプット能力に問題があるためです(参考:「テクニック、インプット、アウトプット」)。 アウトプットの練習のやり方としては、強制的に覚えたリックを曲中に配置して、空いたところは適当に繋げます。フレーズは言葉と似たようなものなので、文脈に沿わない場合は違和感があります。本当はしっくりくるように配置したいところですが、最初のうちはストックが少ないので多少の違和感は無視します。そうやってアウトプットの練習をしていると、だんだん歌の中にリックがが出てくるようになってきます。それは断片的にリックの一部の場合もあります。特にテンポが速くなったりコードチェンジが多くなれば、リックに頼った方が楽だと思うようになります。

リックをつなげているか?

しかしながら、リックが出てくる割合は低いもので、リックを繋げてアドリブをしているという意識は全くありません。曲によってその割合は違います。ブルーノートスケール等は、かなりリックの割合が高いと思いますが、全く使っていない事もあります。ただしリックの断片は出てきます。それと僕の場合は覚えているリックの数が少ないのかもしれません。もっとリックを沢山覚えるとリックの出現割合は増えるかもしれません。

アドリブは歌

「アドリブのプロセス」の記事で書きましたが、アドリブは頭の中で発生した歌であるはずです。これはwikipediaに書いてある事とは異なります。もしアドリブが様々なリックの組み合わせた結果であれば、それはつまらないものになりそうな気がします。マーク・レヴィンの『ザ・ジャズ・セオリー』には、こう書いてあります。

--引用開始--

リックやパターンはアップ・テンポの曲でより多く演奏されるのが常ですが、それは意識的に考える時間があまりなく、指がすでに知っていて安全なところに行こうとするからです。自分の楽器をよく知るためにリックやパターンを活用するべきですが、それだけでソロを組み立てる事はしないようにしましょう。

--引用終了--

僕はこれが真実に最も近いと思います。実際リック使うと少し罪悪感があるのです。ちゃんと歌えてないという事かもしれません。歌の中に自然とリックが出てくるのなら問題ありませんが、無意識的に指が動くようなリックは、当たり前ですが「無意識」な訳です。これをフィンガーメモリーとも言うそうですが、それはやっぱり歌えていないって事になるのではないでしょうか。

リックの練習は必要

しかしながら、リックの練習は初心者にとって効率の良い練習だと思います。リックがアドリブ中に出てこないとしても、よくあるフレーズのパターンを覚える事が出来ます。断片的な事柄を統合して音楽として練習することが出来ると思います。
簡単なツーファイブのリック練習の例
このように右手でアルペジオ系のフレーズを弾き、左手でクローズド・ヴォイシングを半拍前に鳴らしたりして、より練習を実戦的なものにできます。アルペジオの練習もヴォイシングの練習も、それ単体ではつまらない練習になりがちですが、それらが組み合わさるとより音楽的になります。効率的な練習を追求するとリックの練習になる訳です。なのでリックそのものがアドリブ中に出てこないとしても、その練習はアドリブで役に立っているはずです。また短いフレーズは移調の練習を始めるのにちょうど良いでしょう。

結論

  • 多くの本やサイトがリックを組み合わせる事でアドリブを構成するような誤解を与えてしまっている。
  • リックを組み合わせてアドリブをしている訳ではないが、リックがアドリブの中に出てくる事はある。
  • リックの練習は、基本的な事柄を組み合わせた実践的な練習として効率がよい。

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