楽しいジャズピアノの練習方法を追求するブログ

緊張と緩和

つまらないアドリブ

アドリブを初めたばかりの頃は、コードとスケールを覚えないといけないので仕方ないのですが、スケール内の音をアクセントや強弱も無しに8分音符で並べ変化のない単調なアドリブになってしまいがちです。ある程度慣れてきた頃に「これではいけない…」と思いはじめました。では、ダイナミックで盛り上がりのあってよく歌うアドリブはどうやったら作れるのでしょうか?

アドリブ中の変化

よいアドリブを聴いていると様々な変化があります。音量は勿論、音の長さ、音の数やリズムも様々で、良く歌うフレーズほどそういった変化が大きいです。では、どうすれば良くなるのか?というのは永遠の課題でもありますが、そのひとつが「緊張と緩和」にあると思います。ここでは、緊張と緩和を作りだす要素を考えてみます。

緊張と緩和を生む要素

要素緊張緩和
音量
音数
音程
協和/不協和不協和協和
音域高音低音
音の長さ
アクセント
フレージングと休符(※1)
フレーズの上昇と下降(※2)上昇下降
リズム(※3)

(※1)管楽器は息を吸わないといけないので自然なフレージングになりやすいのですが、ピアノの場合、息は関係ないのでフレーズをいくらでも長くできてしまいます。一般的に長いフレーズはわかりやすさや親しみやすさが低くなります。思い切って休符を入れるだけで、アドリブが良くなったように感じる事があります。しかし、どうしてか埋め尽くしてしまう傾向があります。これについては好みも絡むので一概にどちらがいいとは言えません。多くのアーチスト、例えばバド・パウエル、ウィントン・ケリー、オスカー・ピーターソン等、は饒舌タイプで休符も少なめです。アドリブに隙間の多いピアニストは多くないと思います。セロニアス・モンク、アーマッド・ジャマル、ブラッド・メルドー等は休符を上手く使うように思います。ピアニストではありませんがマイルス・デイビスは特に休符が多めで素晴らしい間の使い方をします。

(※2)上昇フレーズは緊張を生むので気分をアゲたい時に、下降フレーズは緩和するので落ち着きたい時に使います。

(※3)裏拍など弱い部分を強調したり、3連などの異なるリズム(ポリリズム)を用いても緊張感を高めます。

理論の説明はどの本にも書いてありますが、この事が書いてある本は少なく、僕が持ってる本の中では「ジェイミーのVol.1」だけです。

アドリブのチェック

これらの要素をリストアップする理由は、自分の演奏を聴いてこれらの要素がずっと同じでないかをチェックする為です。なんとなく自分の演奏をチェックしても「8分音符ばっかり」「音量の変化がないな」とか、当たり前の事にしか気づけません。緊張と緩和を生む要素をリストアップして細かくチェックしてみると普段意識していなかった意外な事に気づいたりします。例として、音数と協和、不協和について考えてみます。 右手でソロをしている間左手でコードを鳴らし続けている事があります。そしてそのコードはクローズドヴォイシングと呼ばれる4和音ばかりだったとします。

教科書通りのレフトハンドヴォイシングをしていると、同じ様にテンションが入って不協和の度合いが均一になってしまいます。よくセロニアスモンクは強烈な不協和音が特徴などと言われますが、実際はモンクは音数の少ない協和なハーモニーをよく使っています。そして協和なサウンドの直後に強烈な不協和を持ってきていることが多いのです。協和なサウンドを使った方が不協和を目立たせる事ができます。つまり落差が激しいので目立つ訳です。

また、アドリブ中にずっと左手を使って和音を出し続けるよりも、まったく左手を使わないという選択があっても良いはずです。キース・ジャレットのアドリブを聴いてみると、アドリブ序盤は大抵左手を使っていません。

リックやシークエンスをチェック

このリストはリックやシークエンスを評価するのにも使えます。チャーリー・パーカーによる典型的なビバップフレーズを例にしてみましょう。
チャーリー・パーカーのビバップフレーズ分析
協和/不協和の観点から色を付けてあります。リズム面では8分音符が主体でシンプルですが、裏拍から入って3連符があり、次の小節では16分音符があるので単調さはありません。2小節は一見何の変哲もないフレーズように見えますが、2拍目でアヴォイドを強調して緊張感を高めています。このフレーズはシンプルに見えますが、緊張/緩和という観点で考えると結構落差があり、それが魅力になっています。

ピアニストのアドリブパターン

よくあるパターンは、最初はシングルトーンでアドリブしておいて、途中からブロックコードと呼ばれる和音で音量を増やして盛り上がりを作るやり方です。レッド・ガーランドなんかそうですね。しかし、ちょっとベタな感じです。実際キース・ジャレットは「音量に頼るアドリブをしない」と話ており、実際のアドリブもほぼシングルトーンです。ブロックコードのパターンが好きならばいいのですが、そうでないなら他の要素で工夫する必要があります。

緊張と緩和で分析

シークエンス(モチーフを様々に変形させたり)、スケールの選択など、マクロ的に考えればばアドリブに変化をもたらす要素は他にもありますが、その場合でも「緊張と緩和」という観点は必要になります。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。
ランキングに参加しています。宜しかったら、ポチっとお願い致します。m(_ _)m