スケール使用例1
Beautiful Love の例
「スケールの使い方」のアヴェイラブル・ノート・スケールとやらを実際にスタンダードで試してみます。今回は「Beautiful Love」のコード進行を例にします。A-B-A-C形式の32小節の曲で、まずAの楽節です。
シンプルなコード進行です。前半がマイナーのツーファイブワンで後半が平行調メジャーのツーファイブワンです。 短調の部分はオレンジ色、長調の部分は青色にしています。コードの上にスケールを略して書いています。省略の仕方はこちらを参照してください。
まずEφですが、ハーフディミニッシュなのでロクリアンかロクリアン#2になります。ここでは『ザ・ジャズ・セオリー』の教えの通りロクリアン#2とします。
A7 は黒本やiRealなどでは親切にも b9 と書いてくれています。しかし何も書いていなくても前のコードがハーフディミニッシュで次がマイナーコード(D-)なのでマイナーのツーファイブです。なのでオルタードになります。
D- はメロディックマイナーにしていますがドリアンでもかまいません。ブルーノートスケールは、雰囲気的にイナタい曲ではないので合わないと思いますが、何を選ぶかは自由です。
C7 はメジャーキーのドミナントという事で選択肢が多いのですが、ここではコンディミにしています。オルタードとリディアン7thは他で出てくるからです。練習効率を考え色々なスケールを使いたいからですが、別に他のスケール、例えばオルタードを練習したければオルタードでも全然かまいません。
EφとA7 は次の小節にあるトニックD-に対するドミナントとして置かれたA7をツーファイブに分割したものです。
次に楽節Bです。
G-7 はFメジャーで考えるとII-7になりますのでドリアンです。
Bb7 はVIb7でサブドミナントマイナーです。このVIb7はよく見かけます。これはリディアン7thスケールを使います。
下の段に行くと D- と G7 があります。D-はトニックなのでメロディックマイナーを使います。G7 はFメジャーで考えるとII7です。ここはリディアン7thスケールになります。そしてGリディアン7thスケール=Dメロディックマイナーなので、このD-とG7の2小節は同じスケールで通せるわけです。ぜひともC#の音を使いたいものです。
前半は楽節Bと同じです。後半はこの曲で一番コードが変化する部分です。こういう処は最もエネルギーを持っているので盛り上げやすいです。
B7 はBb7に対するセカンダリードミナントの裏コードになります。またBb7もA7に対するセカンダリーの裏と考える事もできます。こういった場合オルタードとリディアン7thが交互に現れる事になります。ややこしいですが、これは慣れるしかありません。ドミナントの連続は定番の練習です。全てのキーで練習しておいた方がいいと思います。
このように最初のうちは前もって使えるスケールを書いて使える音を把握しておくとアドリブしやすくなります。
スケールの割り当ては自由
原則的に一つのコードに対して一つスケールを割り当てるのですが、複数のコードに一つのスケールを割り当てる事もあります。ちょっと横着な感じもしますが、その方がアドリブが忙しくならず良くなる事があります。
その逆もアリです。途中から使うスケールを変更する訳です。同じコードが続いたり、テンポが遅い場合にやりやすいです。例えばVコードに対してミクソリディアンからオルタードに変化させたりします。
わからなくなったら
この曲のようにシンプルだといいのですが、ややこしい曲になるとキーと度数がわからない場合もあるでしょう。そして大抵問題になるのはドミナントコードなのです。しかしハッキリ言って度数とかコードの機能とかわからなくても、どのスケールが使えるかわかればアドリブは出来る訳です。ドミナントコードでは大抵リディアン7thかオルタードのどちらかが使えますので、弾いてみてしっくりくる方を使えばいいと思います。とにかく弾いてみてどう感じるのか?というのが大事なので色々試して耳で判断して使えるスケールを決めるといいと思います。