スケール使用例2
A Girl From Ipanema の例
セッションなどで演奏する事も多いボサノバの定番曲「イパネマの娘」なんですが、この曲は初心者レベルの簡単な曲という認識の人もいるようです。しかしコード進行は結構難しいです。AABA形式でAの部分は「Take The A Trrain」と同じで大したことないのですが、問題はブリッジ(AABAのBの部分)です。ここのコード進行は解釈が難しいと思います。実際人によって解釈が違うようで2ちゃんねるで論争みたいになっていました。しかしとても美しい、さすがトム・ジョビンというコード進行です。一般的なジャズのスタンダードではあまり見られないコード進行になっています。
とりあえずスケールを
僕は最初この進行を見た時全然わかりませんでした。何に転調しているのか?コードの機能は?とか。それでスケールをとりあえず弾いてみました。スケールさえ分かればアドリブできるからです。それでしっくり来たスケールがこれです。
B7、D7、Eb7はすべてメロディにナチュラルの9thがあるので、オルタードやコンディミ、ハーモニックマイナーP5ビロウは使えない事はすぐにわかります。という訳でミクソリディアンかリディアン7thしかありません。問題は最初の Gb です。ここはメジャースケールなのかリディアンなのか? トニックだと考えイオニアンだと主張する人もいます。僕にはリディアンの方がしっくりきます。この最初の12小節を見ていると規則性が見えてきます。F#-7 D7 と次の G-7 Eb7 は半音キーが違うだけで同じ進行です。ではなぜ最初 Eb-7 ではなく、Gb なのか。そして僕には4小節毎に転調してるように聴こえます。F#-7 や G-7 はドリアンだとしたら…などと考えてたら見えてきました。
コードの機能
このブリッジの12小節は、サブドミナント⇒サブドミナントマイナーという4小節のケーデンスを転調しながら繰り返している、という事に気付きました。最初のGbはサブドミナントのIVです。前のコード = F から見るとIIb△になり、サブドミナントマイナーへ動くピボットコードと捉える事ができます。したがって Gb がメジャースケールという事はあり得ないでしょう。そうすると次のセブンスコードはVIIb7という事になり、リディアン7thがやはり一番しっくりくるわけです。やっぱりこの頃のミュージシャンはリディアンやリディアン7thを好んで使うんでしょうか。こんなところにもジョージ・ラッセルの影響があるのでしょうか。最後の4小節のドミナント、D7とC7ではメロディが#11thを踏んでいます。ここはオルタードかコンディミがしっくりきますがリディアン7thも面白いと思います。
ジャズとボサノバ
ボサノバはジャズとサンバの融合だとか言われますが、コーダルなアドリブはあまり向かないでしょう。チャーリー・パーカーやバド・パウエルのようなアドリブをすると暑苦しくなってしまいそうです。ビバップフレーズで、やる気があるんだかないんだかといったサウダージ感はでません。そういった訳でどうしてもモーダルなアドリブになってくると思うのでスケールは把握しておきたいものです。
初心者のセッションでもこの曲は結構演奏されます。この曲のブリッジは結構難しいので、初心者じゃなくても変な音を出す人がいます。コードの機能がどうであれ、スケールがわかってしまえばアドリブはできるので、演奏前にスケールをチェックしてどの音が使えるのか把握しておくといいと思います。