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『すごいジャズには理由がある』というすごい本がある

この本を購入したのは1年以上前になるのですが、なかなか紹介できなかったのは、線を引いたり付箋紙を貼ったりして何度も読み返していたからです。この本は自分にとって大切な宝物になりました。
書店や楽器屋さんに行っても、楽譜や教本の棚には置かれていないし、一見したところジャズ・ミュージシャンのエピソードが沢山書かれたジャズ関連の読み物にも見えるし、実際店頭ではそういった読み物の中に埋もれているので、この本はそれほど知られていないかもしれません。
しかしその内容は、ジャズという音楽そのものについて述べられた教本に近いものです。過去の偉大なアーチストの「すごさ」を解説しているのは勿論、様々なトピックがちりばめられており物凄く勉強になります。
本書は、これまで紹介してきた書籍の中でもイチオシのスゴイ本です。

すごいジャズにわ理由(ワケ)がある

すごいジャズには理由(ワケ)がある
─音楽学者とジャズ・ピアニストの対話
岡田暁生(著)、フィリップ・ストレンジ(著)
ISBN-10: 4865590005
ISBN-13: 978-4865590005
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コンテンツ

読者のみなさんへ──[フィリップ・ストレンジ]
はじめに──[岡田暁生]
1 アート・テイタム──“ザ・モダン・ミュージシャン”
2 チャーリー・パーカー──モダン・ジャズの“父”
3 マイルズ・デイヴィス──モティーフ的思考
4 オーネット・コールマン──自由(フリー)
5 ジョン・コルトレーン──自由とプロセスとしての音楽
6 ビル・エヴァンズ──スコット・ラファロとの異次元のアンサンブル
終章 ジャズにはいつもopen spaceがある
あとがき──[岡田暁生]

超おすすめの理由

評論家は音楽を良く知っている人?

一般的なジャズのガイドブックや評論でありがちなのは、これまでどんなバンドに所属していたか、誰と共演したことがあるか、どんなアルバムを過去にリリースしているか、という事ばかりで肝心な音楽については記述が非常に少ない、というものです。ディスコグラフィとバイオグラフィにエピソードばかり。なぜ音楽の事を書かないのかと。もしかして書く専門家というだけで、音楽の専門家ではないのでは?と思われても仕方ないでしょう。書いてる人が「聴く専門の人」では無理があるのではないでしょうか。

音楽をよく解っている人に教えてもらうのがいいに決まっている

音楽の評論や解説は、やはり音楽をそのものをよく理解していないといけないでしょう。例えば、野球の解説者は大抵引退した元選手で、よく野球を理解している人です。見る専門のファン歴ウン十年の人はいません。ジャズの事も専門家に教えてもらうのが一番でしょう。

この本の著者の一人であるフィリップ・ストレンジさんは超がつくほどの専門家(博士)です。コードやスケール等を説明した本やサイトはいくらでもありますが、ジャズを演奏するアーチスト側から、過去の偉大なアーチストが実際どれほど凄かったのか具体的に説明した書籍はほとんどないはずです。

聴くだけで何をやっているのか理解するのは難しい事だと思います。例えば「モードジャズって何?」という疑問は誰もが持つものでしょう。これを説明するのは非常に難しいと思いますが、この本ではとてもわかりやすく解説してくれています。

スゴイ本には理由がある

音楽そのものについての実質的な解説

この本ではジャズの巨人の、その音楽について譜例を使って詳細にわかりやすく説明してくれます。これだけの内容をレッスンで教えてもらうと、どれだけお金がかかる事か…。

「いや、レッスンだと実際に譜例を弾いてもらえるので全然違うよ!」
そんな事いう人がいるかもしれません。
しかし心配ご無用。YouTubeで動画が公開されています。
なんと親切な!

動画では本の譜例を弾いてくれるので、どう響くのか感覚的に確認できます。しかしフィリップさんのピアノの音色はなんでこんなに綺麗なんでしょうか。

第1章 アート・テイタム

「あんまりアート・テイタムのテクニックばかりに感心したくない。」とフィリップさんは言います。本当に注目すべきはテクニックではなくて、モダンなハーモニーなど音楽そのものなのです。実際アート・テイタムのどこがどうすごいのかを、譜面と動画で確認できるというのは凄い事です。このように見逃されやすい事もしっかし指摘してくれます。

前篇
後篇

第2章 チャーリー・パーカー

パーカーの特徴について語られるのは勿論ですが、どれほどミュージシャン同士の競争が熾烈であったのかも教えてくれます。フィリップさんご自身の体験も書かれていて、そういった環境、またミュージシャンの下積み修行的な経験が、生まれてくる音楽にどれほど影響を与えるのかを知る事ができます。

前篇
後篇

第3章 マイルズ・デイヴィス

この本の中には「フィリップさんの名言」がいくつもあります。

「とにかくジャズで危険なのは、「筋肉パターンを脳みそが覚えてしまう」ということです。しかも筋肉パターンを脳みそが覚えた方がアドリブは楽。だけど音楽は筋肉パターンじゃない。ここがむずかしい。」

この指摘には「ドキッ」とする人沢山いそうですね。動画でも、手癖ばっかりで何が言いたいかわからない悪い演奏例があって、思わず笑ってしまいました。しかし、聴く側のレベルによっては音数が多い悪い例の方を支持してしまう人がいそうですが。特にセッションなんかでは。

僕はジャズについて最も多く発生している疑問は「モードって何なのさ?」だと確信していますが、この本と動画による解説は、この世で一番わかりやすく説明されているのではないか、と思います。過言ではないでしょう。モードとはスケール中心のアドリブですよ、と言われてもピンとこないのが普通だと思いますが、動画では「ビバップではこんな感じ」「モードだとこんな感じ」という演奏例があり、ああ、こういう事なんだな、と感覚的にもモードがわかるようになっています。

前篇
後篇

第4章オーネット・コールマン

フリー・ジャズというものを誤解していたと気づかされました。。何も決めないで即興演奏に挑むと、どこかでパターンが必要になってしまう…本当にフリー?という話も面白かったです。また「音楽は上手な人だけのものじゃない、誰が触ってもいい、そういう考え方」がフリー・ジャズにはあるということです。そういう考え方は共感できます。そう言えば、なぜ我々は聴衆がいる前提で演奏するのでしょうか。これは音楽やっているほとんどの人たちが抱えている心理的盲点(スコトーマ)かもしれないですね。自分たちが楽しむために演奏する、というのがあってもいいはずです。

第5章 ジョン・コルトレーン

ここではコルトレーン・チェンジと呼ばれるコード進行と、コルトレーンの音楽が生まれた時代背景や環境の影響についても解説があり勉強になります。この章は内容が結構難しいと思います。『ザ・ジャズ・セオリー』の 「Chapter 15 コルトレーン・チェンジ」にも結構詳しい解説があったので、そこも併せて読むといいでしょう。

前篇
後篇

第6章 ビル・エヴァンズ

どのようにエヴォンズ・トリオが進化していったのか?を知る事ができます。特にリズム面で進化し晩年のエヴァンズが如何にすごかったか?という事も書かれています。それ以外にも、スコット・ラファロ(b)の天才的なベースラインや、ジャズにおける人種差別などの話、見た目やイメージで音楽を売るような業界の話まであり、この章は盛りだくさんで勉強になります。エヴァンズは実はスポーツマンで陽気で気さく、そして親切な男だったそうで、神経質そうなイメージは売るためにつくられたもの、というのは有名な話です。

ためになる脱線話

この本は、岡田さんとフィリップさんの対話形式で書かれていますが、ときどき話が脱線しています。でも、その会話の中で芋づる式に面白く貴重なお話が沢山あります。

生徒役は岡田暁生さん

とは言っても岡田さんも音楽学者で教授。しかし、そんな岡田さんでも「長いあいだチャーリー・パーカーが私にとって鬼門だった。」そうです。僕の周囲でも「パーカーなんだか好きになれない」というのはよくきく話です。ジャズ大好きオヤジ的な意見ではなくて、一般的な人の、クラシック音楽に親しんでいた人がジャズに興味を持ち始めたけど、なんだかなじめないところもある、そういう感じがリアルです。誰でも思い浮かぶであろう疑問や感想をフィリップさんにぶつける、という形で話が進むので、共感できるし読みやすくなっています。

フィリップさんについて

セミナーやライブ行って何度かお話させていただいた事があります。岡田さんは「はじめに」で

「ストレンジ氏を個人的に知る人なら誰でも同意してくれると思うが、本書の企画をとおしてなにより私が感銘を受けたのは、氏の人品、つまりは人間性である。」

と書かれています。これは本当に僕もそう感じました。岡田さんは、つづけてこう書かれています。

「「ヒューマニティ」という言葉は、いまの私にとってはストレンジ氏の音楽以外のなにものでもないと言っても、必ずしも誇張にはなるまい。本書の終章で氏は次のように言っている。「「この音楽は私の音楽。あなたの音楽じゃない!」-僕はこれは好きじゃない」-「音楽は一部の人の独占物ではなくて、音楽が好きなすべての人に開かれたものであるべきだ」という理念を、ここまで本当に身をもって実践してきた人を、私はほかに知らない。だから、であろう。ストレンジ氏のレッスンを受けたあと、私はいつも”身も心も”幸せな気持ちに慣れた。あの幸福感を読者に伝えられないのが、ほんとうに残念である。」

岡田さんが伝わってなくて残念と仰る幸福感ですが、僕はこの本と動画で伝わっていると思いました。レッスンだともっとすごいのかもしれませんが。

岡田暁生さんについて

岡田さんの本をこのサイトで紹介するのは、これが初めてではありません。ピアノ奏法について調べていた時に出会った本「シャンドールピアノ教本」が最初です(岡田さんは監訳者で、著者はジョルジ・シャンドール)。

訳者あとがきに軍隊と教本と音楽教育の関係について書かれていました。チェルニーでピアノが嫌になったり、人格否定をするようなパワハラまがいの指導をしたり、よくそんな話を聞きますが、なぜそんな事が起こるのか?目から鱗が落ちました。とにかくすごい訳者あとがきなので、この本を持ってる人は必読です。

ココはなおしてほしい!

超絶オススメの本で続編を強く希望します。でも、その時にぜひとも改善してほしい点があります。

この本は縦書きになっているのですが、コード進行や曲名、アーチスト名等も横文字のまま縦書きになっています。これがちょっと読みにくいです。

縦書きになっている横文字

首が無意識に右に傾きます。次は横書きにしてください。お願いします。

関連動画

なんと!ためになる動画が他にもあります。見なきゃ損しますよ。

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