サキコロ編集疑惑!?
Saxophone Colossus / Sonny Rollins
Sonny Rollins (ts)
Tommy Flanagan (p)
Doug Watkins (b)
Max Roach (ds)
Recorded in Hackensak, NJ, June 22,1956.
Recording engineer – Rudy Van Gelder
Supervision by Bob Weinstock
ソニー・ロリンズの耳タコ名盤である「サキソフォン・コロッサス(Saxophone Colossus/Sonny Rollins)」の中で一番人気がなさそうな最後の曲、”Blue 7″について、ある事に気付きました。
この曲のモダンで怪しげな雰囲気はなんだろう?
そう思って耳コピしてみると、その独特の雰囲気についてはリディアン7thスケールによるものだとわかりました。それで
やっぱり耳コピ大事だよね…
…と、そういう話ではありません。
結論から言います。このアルバムは超名盤という事になってますが、僕はこれに対して
テープ編集をしてたのではないか?
という疑惑を抱いています。
テープ編集というのは、昔はマスターテープに録音していたようですが、それをハサミで切って繋ぎ合わせる作業の事です。
財務省は改竄を認めましたが、こっちはどうでしょうか。
プレスティッジ・レコードのボスであるボブ・ワインストックが明確な指示はしないものの圧力をかけ、録音技師ルディ・ヴァン・ゲルダーが忖度してテープにハサミを入れてしまったのでしょうか。
これは追求しなければ!
奇妙な構成
この曲は構成が変です。
ロリンズ(ts)→フラナガン(p)→ローチ(ds)→ロリンズ(ts)とにソロを回してテーマに戻り、フェードアウトしていきます。最終的に、ドラムとベースだけになり(8:30~9:20)….普通ならここで終わりです(本当はここで終わってたんではないかという疑惑を今持っている訳です)。しかし、この後突然4バースが始まります。その後テーマ(と言ってもソロみたい)にまた戻り、またドラムとベースだけで12小節。それでやっと終わります。
この構成を初めから決めていたのか?
それとも、なんとなく流れでそうなったのか?
実に不思議な構成だなあ、と思ってました。
どこがおかしいか?
フェードアウトしそうになるベースとドラムだけの部分(8:30~9:20)は、良いマイナスワンになる訳で、ピアノで合わせて弾いてたらなんか合わないんです。最初は「ダグ・ワトキンス(b)が間違えた?」と思いましたが、あんなに上手いベーシストがシンプルなブルースのコード進行を盛大に間違える訳がありません。 問題部分はなぜか28小節あり(ブルースは12の倍数になるはず)、そこのベースラインを耳コピしてみました。フラナガンのピアノが終わってすぐの8分30秒あたりからです。
コード進行だけ抜き出すとこんな感じです。
| Bb7 | Eb7 | Bb7 | Bb7 |
| Bb7 | Eb7 | Bb7 | Bb7 |
| Eb7 | Eb7 | Bb7 | Bb7 |
| F7 | Eb7 | Bb7 | Bb7 ||
| Bb7 | Eb7 | Bb7 | Bb7 |
| Eb7 | Eb7 | Bb7 | Bb7 |
| F7 | Eb7 | Bb7 | Bb7 ||
Blue7はゴーヨンのブルースです。ゴーヨンとは、ブルースのコード進行12小節のうち、9~10小節が V7 ⇒ IV7 と 進行する原始的なブルースのコード進行の事です。ずっとそのコード進行で12小節単位を繰り返してきたのに、ここだけ16小節になっています。最初の4小節が2回繰り返されて1コーラスが16小節になっています。おかしいなぁ。おかしいなぁ(I川淳二風)。
こんな間違え方をするでしょうか?
これはシンプルなB♭のブルースです。そのシンプルな12小節を何度も繰り返して、長さもコード進行も身体に染みついているはずです。相当な初心者でもない限りこういった間違いはしないでしょう。
犯行動機
もし繋いでいなければこの曲は9分です。このアルバムB面はモリタートとこの曲だけなので19分になります。演奏時間を微妙に延ばそうとしていたのではないかと。
氷山の一角?
いや19分ならそんなに短くないじゃないかと思うかもしれません。しかし他でもやっている可能性はあります。この曲は編集をミスっていたからたまたま発覚しただけではないでしょうか。実はこのアルバム、長さのおかしい曲が他にもあります。
3曲目の”Stroade Road”の4バースチェンジなんですが、1コーラス40小節なのに96小節やってます。おかしいなぁ。おかしいなぁ(I川淳二風に)。AABA形式でAが12小節、サビ(B)は4小節です。しっかり聴いているとサビはどこへいったのか?となるはずです。これは間違えたのか…4バースチェンジなどで曲の長さが変化してしまう、というのはかなりの事故だと思いますが、メンバーに動揺が全く感じられません。
もしかして編集!?…陰謀だ~
陰謀論の行方
ジャズでテープ編集や多重録音をするのは詐欺のようなものだ、と考える方もいるかもしれません。しかし堂々と「編集してたよ」と開き直ってる例もあります。
「ブリリアント・コーナーズ/セロニアス・モンク (Brilliant Corners / Thelonious Monk)」というアルバムは、モンクの最高傑作に挙げられることが多いのですが、これは編集していたそうです。オリン・キープニュースというプロデューサーが証言しています。インプロヴィゼーションに出来不出来があるのは当然ですが、難しい曲なのでいい部分だけを繋げたりしたそうです。しかし聴いて解る編集箇所はありません※。実際は結構ハサミを入れてたのではないでしょうか。
※マニアの方へ:パノニカの冒頭部分は変な転調をしており、そこに編集の痕跡が無いとは言えません。ただし、ほとんどの人は気づかないでしょう。
結局、真偽なんてわかる訳ありません。そもそも編集する事は悪い事なのか?という問題もあります。編集してたって内容が良ければいいじゃないか、という考え方だってあるでしょう。そうなるとそもそも「何の為にアドリブをするのか?」という事になりかねません。しかし、そういった事を考える事の方が大切なのではないかと思います。
関連記事
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
ランキングに参加しています。宜しかったら、ポチっとお願い致します。m(_ _)m